2022年新年の挨拶
ウクライナをめぐるロシアとアメリカの対立、NATOの東方拡大に危機を感じるロシアの不安と反発は理解できます。またロシアから送られる天然ガスにヨーロッパの多くの国は石炭よりも環境に優しいということで、頼っています。ころロシアによるエネルギー依存から脱却すべく、突然原子力発電を環境優しいエネルギー源と位置づけたいというフランスの考えに、ドイツの政党は揺れ動いています。民主主義と基本的人権と法による解決という呪文を唱えても、それらが実現するわけでも、維持されるわけでもありません。絶えずその実現のために努力し続ける必要があります。アフガニスタンからNATOの有志連合国が軍隊を引き上げる約束をトランプ大統領はタリバンとして、それを民主党のバイデン大統領が追認し、アフガニスタンは2021年8月末にタリバンの支配する国になりました。タリバンの圧政的支配と報復を恐れて多くのアフガニスタン人が難民となって、国外に脱出しました。イランに避難した人もいますが、多くの難民はアメリカやヨーロッパを目指しました。これまで軍隊を送ってた国の出先機関や、それ以外の国際的NPOやNGOで働いていた人々は優先的にビザを発行して貰えて、国外脱出に成功した人がいる一方、高い教育を受けた技術者や女性は、タリバン政権での可能性を見限り、国外逃亡を図ろうとしています。これまで難民の流入、外国人の労働の移入を嫌って、脱EUというポピュリズムで、イギリスの首相になったボリス・ジョンソンの人気にも限りが見られています。ポピュリズムで政治を動かし、権力を手に入れる、多くの民主主義国家を標榜する国民の、世界を、そして自国を見る責任は大と言えます。
石川EU協会はEUの動きをキャッチし、翻って、日本とアジア、そして世界を見るためにEU研究会を行います。パンデミックが収束できず、活動が制限されいますが、今年も興味あるテーマでの講演会と皆様との交流を企画します。
私たちの活動は,日常的に会の運営を担う事務局のメンバーと、多くの会員によって支えられています。私たちの催し物は参加が無料で、市民に開かれています。参加して下さる市民や学生さんが私たちの活動の支えであります。皆さまの一層のご支援をお願いするとともに、このような会に興味を持たれる方のご入会は大歓迎です。また事務局(全員無料のボランテア)を手伝って頂ける方を歓迎します。今年も刺激的な催し物を企画したいと考えています。コロナ禍が収束しない場合は、Zoomによる講演会に切り替えたいと思います。今後とも皆さまのご参加とご協力をお願いいたします。
会長 楠根重和
昨年はこれまで石川EU協会を精力的かつ超人的に支えてこられた名誉会長の浅野周二先生の訃報がありました。そして今日(2月4日)、古池伸江理事の葬儀が行われました。
浅野名誉会長と古池理事には石川日独協会と石川EU協会の両方でお世話になり、浅野先生とは石川日独協会のドイツ旅行にご一緒しました。またEUの本部を二度一緒に訪ねました。
古池理事とは二度も石川日独協会のドイツの度に参加して頂きました。そのときの写真は石川日独協会のホームページに掲載されています。古池理事は社会に積極的に働きかけ、多くの
友人を獲得されました。とくに国際平和に関心があり、石川EU協会に加入して下さいました。今日の葬儀で遺族の古池家からの配られた文書をここに掲載させて頂きます。
新しい催し物ほど上に来ます
The newest event comes above.
青タイトルは石川EU協会の催し物(共催を含む)ならびに特にEU関係で重要と思われるものです
Events in read are our own events, co-sponsered is also included.
赤タイトルは他の団体や石川EU協会会員やその他のEUに関する催し物等です。
皆様からの情報を事務局にお願いします。
Events in black are those of other organisations
2022の催し物 (Events 2022)
「平和のために我々ができることー民衆法廷を中心に」 南コニー
新型コロナウイルスのまん延により、ロックダウンや医療崩壊など危機管理体制が問われ、
多くに人々にとって今後の生き方を考えるきっかけにもなった。しかし、そんな危機にさらされる
はるか以前から、この社会が平和で平等であるという考えは幻想にすぎないと私たちは気づいていた。
格差社会による貧困の拡大、孤独や生きづらさから命を絶つ人も年々増えている。それに加えて
昨今では、ミャンマーのクーデター、アフガニスタンの政情不安とテロ、ウクライナへの軍事侵攻など
今この瞬間にも多くの人々の命が奪われている。このような不条理な時代を共に生きるために、
何が必要だろうかと聞かれたならば、「共感力と、それを行動に移し続けること」としか答えられない。
毎日のように戦禍を映し出すメディアの映像を見て、何もできないことに歯痒さを感じる人々も
多いのではないだろうか。国連は、国際司法裁判所は一体何をしているの?そんな疑問の声が
留学生たちからも聞こえてくる。答えは簡単で、50年前から決して機能しているとはいえない。
だからこそ「民衆法廷」が生まれ、常設化されたのだ。世界で最初の民衆法廷はアメリカによる
ベトナム民衆の大量虐殺に対して異議を唱えるために、バートランド・ラッセルと
ジャン=ポール・サルトルたちによって1967年に開かれた。民衆法廷は国家や国際機関が
設置する法廷とは異なり、国際的な人道問題が発生している地帯に関する情報を広く知らしめるとともに、
問題の所在を明らかにし、現状を糾弾することで和平を促し、現在も世界各地で開かれている。
民衆法廷の判決に法的拘束力はない。しかし、特筆すべきは市民が戦争犯罪を糾弾する声をあげ、
裁判の主体となり、執行者にもなり得ることを示す点にある。
「民衆法廷」は思想家や知識人が市民と共に理不尽な国家権力を裁くことを呼びかけた歴史的事件であり、
裁判の歴史においても画期的な転換点であった。
法廷期間中、サルトルは新聞記者から「どうしてこのような裁判を(裁判官ではない)あなたが開くのか」
と質問され、次のように答えている。「それはあなたがしなかったからだ」と。戦争の悲惨さを目にし、
アメリカを非難する記事を書いただけでは戦争は終わらない、さらなる一歩を踏み出す必要がある
というのが信念だった。
日本のような同調圧力の極めて強い社会で反対の声をあげるのはとても難しい。唯々諾々と
従うか沈黙を守る方がはるかに「楽」なのだ。しかし、それではますます生きづらくなる。
今日は「民衆法廷」の成り立ちを紹介しつつ、沖縄返還50周年を迎えた日本に生きる私たちが
平和のために何ができるのかを一緒に考えたいと思います。戦争反対の声をあげよう、共感の声を広げよう、
民衆にもっとPowerを。